🎪 NEXT STAGE 🎪


【予告】
 2019年8月
「熊谷有芳の全力演劇夏祭り(仮)」

 **8月にたくさん演劇します**
 詳細は追って!

2019年01月31日

Lieber Joseph Altman

ヨーゼフ=アルトマンへ

もう何十年前なのでしょうか。あなたがわたしに宛てた手紙があったことを知りました、たった今。

あの日々を、ハンス=シュタイナーの家で暮らした日々を、わたしは今日まで1日も忘れたことはありません。

あの日々は、決して自由ではなく、窮屈で、毎日つらい報せもあったけれど、お父さんとお母さんとあなたとまた一緒に過ごせた日々は、安寧の時間をわたしに与えてくれました。

あなたとは小さい頃から一緒でした。よくうちに遊びに来てご飯を食べましたね。わたしの嫌いなものが出てくると、あなたは母に気付かれないようにコッソリと食べてくれましたね。だから、隠れ家にいた時に、何も言わずにわたしのビーツを食べようとしたあなたを見て、大笑いしたことを今でも鮮明に覚えています。「ヨーゼフ、わたしもう、ビーツ食べれるのよ!」それに、あの時は食料は全て貴重だったのだから、それを食べてしまおうとするのが、なんだかおかしかったのよ。必死で謝るあなたの顔を見て、また笑ってしまいました。毎日がそんな小さな幸せとともに在り、潜伏中の身でありながらも安らぎを得ることができました。

あの家から出て行って、大きな不安を皆んな抱えてる中で、あなたは沢山話しかけてくれて、わたしを安心させようとしてくれましたね。あの時だけじゃない、昔からずっとそうだった。ちゃんと思いを伝えたことはなかったけれど、わたしはずっとあなたに感謝していたのよ。ヨーゼフ、直接言えなくてごめんなさい。いつもありがとう。

わたしもそろそろそっちへ行くと思います。
お父さんとお母さんとあなたと、また一緒の生活が出来るのでしょうか。そうしたら…そっちでは、今度こそハンスと一緒に生きていけるのかしら。いえ、死んでしまうのに「生きていく」っていうのは、おかしいわね。それに、一緒にいるとなったら、あなたとお父さんはあの時みたいにまた反対するかしら?そうしたら困っちゃうわ。またソファに掛けて話し合わなきゃ。

ごめんなさい、あなたに宛てた手紙なのに、なんだか自問自答のようになってしまったわ。

さて、きっともうすぐチーズの載ったトラックがわたしを迎えにくるわ。そうしたらきっとまた会える。

あなたからもらった手紙と、この手紙を胸に、わたしは眠りにつきます。
それでは、おやすみなさい。


2010年1月29日

エヴァ=アイゼンシュタット



これは、アガリスクエンターテイメント第26回公演『わが家の最終的解決』でヨーゼフ役を演じた津和野諒くんが、「裏パンフ」に寄せた文章−ヨーゼフがエヴァに書いたけれど渡せなかった手紙−それに対するお返事です。

渡せなかったはずの手紙が、何十年もの月日を経てエヴァの手に渡ったとしたら。

エヴァはしわくちゃの顔で笑って、この手紙を書いたと思います。

エヴァは生きていたら今、100歳。
もしかして、この世界のどこかに…?
なんてね。


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※追記
ユダヤ教の死生観では「死後の世界」は存在しないみたいです。もちろん天国のつもりで書いたわけではないけれど、わたしの不勉強でした!でももう書いちゃったのでこのまま残しておきます。
posted by 熊谷有芳 at 18:42| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする